「ただいま、当麻」
礼儀正しく、きちんと帰宅を告げるのは、学生時代から変わらずだ。
一日の仕事を終えて疲れているにもかかわらず、見目が麗しいのも変わらずで…。
贅沢にも、それが日常の風景。
非日常で出会ったせいか、その有難味を感じる事が出来る。
贅沢だと思うのは、相手がこの世に生らぬ程の美人さんという事もあるけれど。
世間からは非常識といわれる同性同士。
だから、より一層に、この時間と空間が大切で仕方がない。
「おぅ、おかえり~」
言葉を返しながらも、征士の声・気配・表情、全てを確認して。
今日の様子を伺い、推し量る。
それは、ご機嫌とりじゃなくて。
過去も未来も一緒に過ごす相手とは、もちろん、今も心地よく過ごしたいから。
疲れてない?嫌な事なかった?
自分からは愚痴や弱音を言わない恋人だから、言外から察知するしかなくて。
もし、何かあったなら。
一番に知りたいし、話したい。
相談も乗るし、慰めたりもできる。
ストレス発散にも付き合うから。
言ってしまえば。
ただ単に、盲目的に、骨の髄から―――愛してる。
スーツの上着を脱いでいる征士を手招きして。
「なんだ?」
天才的な容量を誇る脳味噌は、過去のデータから「今日は大丈夫」と解析を終えたけど。
最後のチェックは、視認ではなくて、触診で。
「お疲れさん」
ネクタイを引き寄せて、目元にキスをする。
最初の頃は、機嫌やらタイミングやらを間違えて。
顔面への手のひら攻撃で押しのけられたり、酷ければマジ肘打ちをされたりしたけど。
今は、もう、大丈夫。
照れたように微笑む征士。
「なんか、楽しそうだな」
そりゃ、お前の機嫌がいいから。
共鳴してるんだよ。
「うん、楽しいよ」
しゅるりっとネクタイを引き抜いて、ボタンに手をかける。
「自分でできる・・・」
「手伝うよ。…なんでも、一緒にやろうぜ」
そんで、もっと楽しいこともしようか?
「それをすると、着替えるだけでは済まなくなるだろう」
正解!
なんで、こんなに以心伝心なんだろう?
「問題ないだろう?」
と言えば。
是とも否ともつかない、曖昧な笑みが返されたから。
そのまま、続行することにした。
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「当麻……やはり…」
征士には、問題があったらしい。
ソファに引きづり込んで、下着まで取った状況で。
もちろん、スラックスは皺にならないように、ローテーブルに置く気づかいまで見せたのに。
この期に及んで、「腹が減った」と言った。
「先に、俺が食べるから」
何をって、もちろん征士を。
強く言うと、流石にそれ以上は言わなったけど。
空気読んでないにも、程がある!
んで、「飯よりもお前が欲しい」と言わせたいのは、俺の勝手ですかね?
いつもは、のめり込むように夢中になるけど。
こんな時はちょっと、冷静に。
どことどこを責めれば、効率よく最高級に啼かせる事ができるかなんて。
よく理解している。
弱くて敏感な個所を、唇で優しく愛撫しながら。
息が上がってきている征士を、更に追い詰めるように。
奥に指を這わせて、熱くて、薄い粘膜をかき混ぜる。
「…あぁ………あぁ……」
よく識っている快感を思い出させる行為。
いつもと違うのは、特に悦ぶ個所を責めないでいること。
「とぅ……ま……」
やや非難めいた呼ばれ方だけど。
気にしない。ワザとだから。
指を増やして解しながらも、まだソコには触れてないでいて。
期待して、内がイヤらしく蠢いて。雄弁に語り始める。
口には出さないけど。
もう、限界でしょ。
慣れた身体は、きっと俺を欲してる。
だから、身体を起こして座ってやった。
欲しければ、自分からおいでよ。
食事よりも、美味しく俺を呑み込んでよ。
征士を起こすように、腕を引きながら。
胸の突起を舐めあげて。煽るように。
「自分でできる?」
やや上目遣いで、反応を伺うと。
「…手伝え…なんでも…一緒にやるのだろう?」
目論見は、看破されているようで。
征士に手を取られて、己を掴まされる。
もう片手は、腰へと導かれ。
淫欲を孕んだ鋭いまでの紫の視線に、ゾクリとする。
そんな瞳で見られたら、イッちゃいそう(笑)
ねだられる様な濃厚な口づけを送られて。
限界ぎりぎりなのに、精一杯強がっているのがわかるから。
ここで、負けちゃうのは、惚れた弱みだろうなぁ。
んでもって、我慢できないほどに、なってきてます。
「そうだな。一緒にするの、スキ」
時折、ふるるっっと身体を震わせて、耐えるように身動ぎする中腰の征士。
その奥に、己を埋めるために。腰を掴まされている手に力を入れて、座るように促す。
「ああああ……」
首を仰け反らせながら、深くつながって、満たされている事を教えてくれる声。
「気持ちイイ?」
聞くと、微かに頷く素振りを見せる。
それがなんとも嬉しくて。
むちゃくちゃに突き上げる。
後は、夢中で熱い征士をただひたすらに感じて。
「俺も、気持ちイイよ、せーじ」
嬌声をあげる白い喉仏をぺろりとなめてから。
鎖骨に口づけを紅く残す。まるで、ネックレスかネクタイのように。
ネクタイが会社への忠誠であるのなら。
この痕は、俺からの至誠の証。
消えてしまったら、何回でも、描き直すから。
消えてしまっても、ずっと、変わらないから。
それほどに。
「アイシテル」
互いに荒くなる呼吸の合間に。
何万回言ったかわからない言葉を囁きながら。
果てるのがもったいないくらいの時間を、引き延ばすかのように楽しんだ。
END
2012-01
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このお話、以前に捧げさせて頂いた拙イラ → ■ から連想して創って下さったとのこと…!
…うおおぉぉぉぉ…!うそおぉぉぉぉ!?マジッすか…
ううう嬉し過ぎて管理人、目から鼻水が出そうです…(キタナイ…)
そうか、あのちゅーの後は…このお話に続く展開になるのね…ウッヒョイ…!
ああ、もう、そうとしか見れなくなってきた。…出たよ風宮マジック…!
風宮さん、本当にどうもありがとうございましたー!^^!メチャクチャうれしいです!!!